先日、連休を利用して隣の石川県の温泉に行ってきました。
行き先は粟津温泉「喜多八」です。

以前からネットショップに関わる者として非常に気になってた温泉旅館です。
<「喜多八」さんのサイト>

サイトをご覧になればお気づきになるかと思います。
この旅館の「三代目」が面白いのです。
ただ店側スタッフの顔が出てるというのなら、今時どこのショップでもやってることですが、ここの場合は徹底しています。
ほとんど全てのページに三代目が出ているばかりでなく、三代目キャラを前面に出したコミカルな紹介動画まで作る念の入りよう。
この動画を見てここに決めた人は多いと思ます。
私も三代目のかもし出すなんだか楽しそうオーラにやられてずっと気になってたクチ。
とにかく今にも三代目ストラップとか作っちゃうんじゃないかという勢いです。

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部屋に置かれた「三代目ガイド」。
粟津温泉街や近辺の観光名所を三代目が紹介。
さらに三代目の日常を綴った「三代目日記」まで!

 

「お客さんを喜ばせたい一心で、人一倍東奔西走してるんだけど何故だかとってもメタボ(最新のデータによれば98kgだそう)」という「三代目」のキャラクター。
私は密かに「キャラ温泉」と名づけてました(^^)。


で、結論。
やっぱり行ってみなきゃ分からんことってあります。行って良かったです。


一番分りやすいところで料理。
今回、あわび蒸し焼きと能登牛のサイコロステーキをメインにしたコースをお願いしました。
もちろんこれらが美味しかったのは言うまでもないのですが、驚いたのは・・・


大体、何度か旅館に行ったことがあると見えてくることがあるじゃないですか。
品数合わせの小鉢とか。
例えば煮物とかってなんだか無意識に食べちゃってるじゃないですか。
そういうちょっとしたおためごかしが・・・

 

ここ、全品勝負してるんです。どの一品にも表情があります。
そのことが直球勝負のメインディッシュをさらに引き立てることにもなっている。

そりゃ高いお金出せば、最高級の素材を食べられる料理屋はいくらでもあると思います。
でもここの料理からは「せっかくの温泉旅行、最後までワクワクしてって下さいよ」というスタッフの気持が伝わってくるのです。

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フカひれスープのパイ包みにはフカひれの塊りが惜し気もなく・・・
マジですか?なんかの間違いじゃないんですか?

 

 

 

 

おかげで前菜からご飯、香の物、デザートに至る最初っから最後までウキウキしながら箸を進めることが出来ました。
そして全ての料理を今でも覚えています。

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香りも爽やかなブルーベリーのケーキ
デザートも抜かりありません

 

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へこみ加減が実によく手になじむお銚子。
驚いたことに、どのお銚子も同じところを同じように手で凹ませて焼いてあります。

喜多八さんがそのように指定して特注しているとのこと。

どんだけこだわるんだよ!

 

 

 

 

夕食に対する朝食もそうです。
温泉卵のダシ加減に至るまで手を抜いてません。
なにより釜炊きのご飯(釜で出てくる!うっすらとおこげもある!)が素晴らしい。
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自分は米どころ福井の人間ですが「これは!」という感動のご飯でした。
箸が止まらずつい食べ過ぎて小一時間動けませんでした。
でもお釜でおかわりしようかとすら思ってしまいました。
さては仲間を増やす気か三代目。

 

「旅館ではこういう風にするものだから」という固定観念をひっくり返そうという意気込みが伝わってきます。

ネットでの評判に違わぬ仲居さんたちスタッフの気さくな物腰は言うまでもなく、
チェックイン時に渡される担当の仲居さんの名前が入った案内カード
(おかげで仲居さんの名前までしっかり覚えてます。なつこさんお世話になりました)
ロビーのソファーのクッションの具合
浴場のスリッパ置き場
何気に置かれてるように見えるこうした小道具からも。

「旅館てこういうものだよね」という、こちらが知らず知らずに抱いていた先入観・密かな諦めに対して、一つ一つ三代目がひょこっと顔を出して「こんなんどうですか?」って言ってくるような。
しまいには旅館内のそこかしこに三代目が隠れているかのような錯覚すら覚えた次第です。

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あー。温泉って上がるときは誰のか分からんスリッパ履く羽目になるんだよなぁ。
水虫とかうつったらやだなぁ(元水虫保有者だけに切実)・・・

などと思いながら浴場の入り口に向かうと、なんとそこには手作りのスリッパ用下足入れが。
おまけに殺菌灯まで付いている!思わず感動してケータイで撮ってしまった次第。

一度これを知ったら、もう戻れませんがな。

 

 

WEBサイトでのアピールや、部屋に置かれた「三代目ガイド」(これお土産に一冊欲しいです)などが伝える三代目の人柄もさることながら、それを支える仲居さんを始めとするスタッフの一体感のなせる業なのでしょう。

 

料理や客室・サービスに加えて、風情だとか湯けむり情緒だとか訳の分からないものまで要求される温泉旅行。
極めてデリケートな商品です。
そこで「喜多八」さんがやっておられることこそ、実は旅館業というか接客というもののまさに王道じゃないかと思ったのでした。

 

激化する価格競争を勝ち抜くため効率主義がハバを利かすこのご時勢です。
何かにつけ店とお客さんとのつながりというのは段々希薄になってこざるを得なくなっています。
しばらく前から話題になっている「クレーマー問題」(自分はこの言葉は使いたくはありません)にしてもそうした土壌というか空気の中で生まれてきたものに違いありません。

 

サービスの中でいかに送り手の人間性を感じてもらうか
店とお客様との血の通った出会い、人間関係をいかに育んでいくのか
理想論ではなく現実的で具体的な一つの答えがこの旅館では示されている気がします。

ゆったりと温泉を楽しんだことは言うまでもありませんが、大変勉強にもなった一泊二日でした。

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帰りがけにフロントから飛び出してきて写真を撮ってくださった三代目。
体からは想像できない軽やかなフットワークでお客さんの懐に飛び込んでおられました。

WEBページで何度も見ている上に、ご本人の何とも言えない気さくさがあいまって、とても初めて会った気がしません。
こっちもメタボなので親近感あるし。

 

 

身体ばかりでなく心にまで沁みる温泉を味わってみたい方は、是非一度足を運んでみてはいかがかと。
喜多八さん、ありがとうございました!

 

 


で、そういうことでモノは相談なんですが、
これ研修ってことで経費で落ちませんか?>社長

あ、やっぱり落ちませんか。そうですか。